外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


 キンと空気が凍てつく二月初旬。どんよりとした寒空の下、東京国際空港へと到着し、搭乗手続きに向かう。

 フリーカメラマンになって今年で五年目。

 写真を撮るということに興味を持ち始めたのは、高校に入学してからだった。

 校内に掲示されていて何気なく目にした、全国高校写真コンクールのポスター。

 そのグランプリを受賞していた写真に、自分でも驚くほど心動かされたのだ。

 青空に向かって顔を上げ、ピンと背を伸ばす雨に濡れた向日葵の花たち。その背景にある澄み切った空には、大きな虹が架かる。

 向日葵も虹も知っているはずなのに、こんなにも美しいものだったのかと惹きつけられ、心動かされたあの感動は今でも忘れない。

 当時、担任に無理を言って、掲示後にそのポスターを譲ってほしいと申し出たくらいだった。そのポスターは、今でも大事にとっておいてある。

 その写真との出会いから、私のカメラマン人生がスタートした。

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