外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


 ズバリ指摘され、大河内さんを見ていた視線がテーブルの上であからさまに泳ぐ。

 そんな私を前に、大河内さんは「すみません」と即謝りの言葉を口にした。


「立ち入ったことを訊きましたね。流してください」

「いえ、全然! ご名答だったので、やっぱり顔に出てるのかって」


 へへっと笑って浮かないと言われた顔に笑顔をつくる。

 大河内さんは手を止め、プレートに向けていた視線を再び私へと寄越した。


「あ、実は私、両親からお見合いをしろと言われていて。今もその件で電話で」

「お見合い?」

「はい。このモルディブでの仕事を終えて帰国をしたら、今度こそお見合いの席に連れていくわよって、母が」


 浮かない顔の理由をそこまで話して、「あっ」と気付きが声に出る。

 こんな話、面白くもなんともない。初対面の人に話すネタではなかった。


「すみません、つまらない私の話を」

「いえ。まさに自分と同じ境遇だなと、逆に親近感を覚えていたところです」

「え? 同じ境遇って……大河内さんも、お見合いするんですか?」

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