外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「私、三十歳目前で、いつまで独身でいるつもり?って、両親が心配をするのもわからなくはないんです。だけど、どうしてもお見合いっていうのは……」


 そう言ってハハっと笑い、「って言っても、結婚に発展するような相手もいないんですけどね」と付け加えた。


「そうですか。頑なな意思なので、てっきり想う相手がいるのだと思いました」

「いえ、残念ながらそれは。もしいるなら、もっと強く拒否できるんですけどね。大河内さんは、なぜお見合い反対派で?」


 私と同じように周囲に結婚を勧められ、乗り気になれない彼の理由はなんだろう。

 すごく気になる。

 ハイスペックなだけに、舞い込むお見合いも好条件で選びたい放題だろうに。


「私は仕事柄ですかね。相手には落ち着かない生活を強いることになりますし」

「それは、海外に滞在したり、日本に戻ったりがあるから?」

「はい。結婚しても、日本と海外で離れて暮らすことになるかもしれないですし。もし子どもでも生まれたら、住まいがあちこちに変わるのは可哀想だとも思いますから」


 なるほど……。

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