外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「話の振り幅が大きくて、写真の話は物足りない感じはありますね」

「あ、言われてみれば……。私が電話に立ってから話の方向がおかしくなっちゃいましたからね。すみません」

「それなら、帰国される前にもう一度食事でもどうですか?」


 あまりにさらりと言われて、心の中で『えっ』と声を上げる。

 でも同時に、それなら今日のお返しができることに気がついた。やっぱり、ご馳走になったままでは気が引ける。


「あ、じゃあそのときは私にご馳走させてください」


 今日ご馳走になってしまっても、次があるならそれで割り勘のようになる。

 私にそう言われた大河内さんは、なぜだか小さくフッと笑った。


「そういう約束にしておけば、また会ってもらえますか?」

「え?」


 どこか意地悪なニュアンスが含まれた言い方をされ、どきりと鼓動が跳ねる。

 思わず目が離せなくなったようにじっと大河内さんを見つめてしまうと、「なんて言うのは冗談で」と元通りの彼に戻った。

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