外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
異国の地での秘密の夜
いただいた連絡先には、その晩すぐに食事のお礼を送らせてもらった。
それから何度かやり取りをして、改めて会うのは私が帰国する前日の夜にしようという話にまとまった。
モルディブ滞在四日目、五日目と順調に仕事をこなし、六日目。
この日も朝からマーレ近郊のダイビングスポット『オールド・シャーク・ポイント』で潜りお昼すぎまで撮影を行った。
その後、一度ホテルへと戻りシャワーを浴びて、写真のチェックと事務作業をこなし、気づけば時刻は午後四時過ぎ。
大河内さんとの約束は五時で、この場所まで迎えに来てくれるという話になっている。
【ドレスコードのあるレストランを予約しましたが、スマートカジュアル程度の装いは可能でしょうか?】
食事の約束のやり取りの中で、そんな質問のメッセージが届いた。
何が起こるかわからないため、仕事で海外に渡航する際には一応正装と呼べるコーディネートは持参してきている。
今回持ってきていた、アイスグレーカラーのスカラップレースワンピースを身につけ、靴はつま先の開いていないブラックのシンプルパンプスを用意。
久しぶりにこういう華やかな格好をすると気持ちがシャキッと引き締まった。
支度を終えて五時五分前にホテル前に出ていくと、すでにタクシーが一台停車して待っていた。