外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「空港からニ十分ほどスピードボードに乗りますが、大丈夫ですか?」
「え、そうなんですか? それは全然問題ないです」
想定外のことを言われ、鼓動が落ち着きなく音を立て始める。
マーレ近郊のレストランで食事をするとばかり思っていたのに、空港からスピードボードに乗って目的地に向かうという。
スピードボードに乗って移動するということは、どこかのリゾート地に向かうということ。
モルディブにリゾートで訪れる人の多くは、ヴェラナ国際空港からリゾート地が用意している水上飛行機やスピードボードに乗ってそれぞれ目的のリゾート地へと向かうのがメジャー。
日本でいうホテルが用意している送迎バスのようなものだ。
ドレスコードもあるというし、もしかしたらすごく素敵なレストランを予約してもらったのかもしれないと思うと、緊張とワクワクが同時に増していく。
仕事で訪れ、モルディブといえど自分にはリゾート地は無縁だと思っていたからだ。
ヴェラナ国際空港より、スピードボードでニ十分ほど。
大河内さんが見えてきた島を指さし「あの島です」と目的地が近いことを教えてくれた。