外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
百四十ものリゾートアイランドが点在すると言われているモルディブ。
憧れの一島一リゾートに自分が訪れることになるとは思いもしなかった。
スピードボードが島へと到着し、大河内さんの案内で島からクリスタルブルーの海に真っすぐ長く伸びているジェティを進んでいく。
わずかに吹いている潮風が気持ちいい。
「こういうところに来るなんて、思いもしませんでした」
「そうでしたか。お仕事で滞在中、一泊くらい泊まってみようとか、検討されなかったのですか?」
「憧れるなとは思いましたけど、そこ止まりですよ。だって、ひとりで来るようなところじゃないですし」
となりを歩く大河内さんが私を見下ろしている視線を感じて顔を上げる。
大河内さんは目が合うと「確かにそうですね」と微笑と共に同意してくれた。
ジェティの先端には真っ白な外壁の建物があり、到着すると大河内さんは入り口の受付カウンターのスタッフとやり取りを交わす。
入り口ドアのガラス窓に映った自分の髪が潮風で乱れているのに気づき、手櫛でささっと整えた。