外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「あ、撮影しても大丈夫でしょうか?」
「ええ、構わないですよ。お店的にも問題ないと思います」
「ありがとうございます」
許可が出たところで数枚シャッターを切っていく。
レストラン内の雰囲気を収めたところで、向かいの席に掛ける大河内さんがクスッと笑った。
「ああ、すみません。本当に好きで今のお仕事に就かれたのだなと思いまして」
「あ……すみません、ついいつもの癖で」
「いいですよ。気にせずに」
レストランのスタッフが席へとやってきて、大河内さんに革張りのメニューを手渡す。
大河内さんのほうがディベヒ語と思われる言語で話しかけると、スタッフも英語ではなくディベヒ語で応え会話が始まる。
本当に色々話せることに感心して見守っていると、大河内さんからメニューを差し出された。
「もしよければ、ワインやカクテルなど頼めますが、嘉門さんアルコールは?」
「あ、はい、飲めます。でも、なんでも大丈夫なので、お任せします」
答えながら、ここがリゾートアイランドだからか、と気付く。
本来であれば、飲酒はできないモルディブ。渡航してきてからはお酒を一滴も飲んでいない。
リゾート地を訪れる予定が今回の仕事ではなかったため、お酒を飲めることもないと思っていた。