外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「わかりました。では、何か飲みやすいものからオーダーします」
「はい。ありがとうございます」
大河内さんにお任せでアルコールのオーダーをしてもらうと、すぐにスタッフがワインボトルを手に席へとやってくる。
グラスに注がれていくのはスパークリングワインで、小さな気泡がしゅわしゅわと弾けた。
「お酒、久しぶりに飲みます」
「私もです。こちらに来る前には?」
「なんだかんだ一カ月以上飲んでないです、そういえば」
家ではほとんど飲まないし、飲むとすれば友達とディナーに行ったときくらいなものだ。
でも、最近は友達に会う機会がランチばかりで、お酒はご無沙汰気味になっていた。
大河内さんのグラスにもスパークリングワインが注がれ、スタッフが一礼して席を離れていく。
大河内さんの長い指がグラスに触れるのを目にし、倣ってグラスを手に取った。