外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「明日の便で帰国されるのですよね? お仕事のほうはどうでしたか?」


 が、まさかそんなことがバレるはずもなく、大河内さんが出した話題は私の仕事のこと。

 安堵しながら「はい」と頷いた。


「おかげ様で、予定していた撮影は全てこなせたので、胸張って帰国できそうです」


 そう言って「あっ」と傍らに置いたバッグを手に取る。

 常に持ち歩いている分厚い手帳を中から取り出し、挟んでおいた写真を一枚抜き出した。


「マンタ、あの翌日出会うことができたんです。で、良かったらこれ……」


 大河内さんに出会ったあの翌日、再び潜った『マンタ・ポイント』で念願のマンタに遭遇することが叶った。

 撮影してきた中から自分の気に入った写真を、持ってきていたポータブルプリンターでプリントアウトしてきたのだ。

 ゆったりと泳ぐ巨大なマンタを、下から煽るように撮影した一枚。

 眩しい太陽を受けるクリスタルブルーの海が美しく、まるでマンタが空を飛んでいるようにも見える。

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