外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「すみません、本当にオシャレ感ないですけど」
「そんなことはないですよ。ありがとうございます」
大河内さんは再び手にした写真を裏面にし、確認するように今私が残したサインに目を落とす。そしてすぐに写真側にひっくり返すと、笑みを浮かべ視線を上げた。
「いい記念になりました。大切にしますね」
切れ長の目がわずかでも優しい笑みを滲ませているのを見て、不覚にもドキッと心臓が音を立ててしまった。
「でも、マンタに会えてよかったですね。どうでしたか? この写真だと、すごく迫力がありますけど」
「はい。結構大きいのに会えて。たぶん、五メートル近くはありそうでした。でも、泳ぎ方がふわりふわりなので、全然怖くなくて──」
手渡した写真からマンタの話に盛り上がり、会話のキャッチボールは弾んでいく。再会の食事は、今回のモルディブ撮影の話題から始まっていった。