外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


 イタリアンレザーのカメラストラップ。

 フリーランスでやっていくと報告した後日、七央が突然プレゼントしてくれたものだった。

 私の名前が刻印されていて、わざわざオーダーしてくれたことがすごく嬉しかった。

『事業が成功するように』

 相変わらずにこりとすることもない不愛想だったけど、そう言ってくれた気持ちはちゃんと伝わった。


「変な話、カメラはまた買えば同じものが手に入りますけど、プレゼントを無くしたことはまた違うショックがあって……」

「それは、もしかして恋人からのプレゼントだったり?」


 思いもしない方向の質問が飛んできて、「えっ」と声が漏れる。


「違います! そういうものでは、まったくなく!」


 思った以上の声で返答してしまい、余計に自分の動揺を強調したような雰囲気になってしまう。

 大河内さんは過剰反応した私の複雑な心境を見抜くように、意味深にクスッと笑った。

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