外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
大河内さんの微笑に鼓動が弾み、平静を装うようにグリルされた美味しそうな鱈にナイフを入れる。
「本当に、違いますよ? そういう相手ではなく、ただの幼なじみで。あ、それに少し前に結婚しましたし!」
「なるほど。では、初恋の相手といったところでしょうか」
ゔ。す、鋭い……。
「大河内さん……エスパーかなんかですか?」
「お。では、正解ということですね」
「まぁ、はい……。でも、本当にずっと友人という関係なので。私が一方的に好きだった時期があったというだけです」
今更こんな風に蒸し返すと気恥ずかしい話で、誤魔化すようにワイングラスを手に取る。
魚料理と合うドライな甘味の白ワインで、さっぱりとした風味がさっきまで飲んでいたフルーティーなスパークリングワインとはまた違って美味しい。