外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「そうですか。てっきり、その相手を引きずってお見合いの話を拒否しているのかと思いました」
「え? いや、違いますよ!」
それは違うと言い切れる。
「それとこれとは話が別ですし、それに、さっき言ったじゃないですか! 向こうは既婚者ですし、もう過去の話です」
事実を述べているのに、それがなぜだか嘘を並べているような気がして落ち着かない。つい必死に否定してしまったからだろうか。
「とにかく、違いますからね。そんなこと言ったら、大河内さんこそお見合いを拒否する理由になるお相手がいるんじゃないですか?」
自分ばかりするすると暴露してしまい、話の矛先を大河内さんへ向ける。
しかし、タジタジになってしまった私とは違い、大河内さんは顔色ひとつ変えずに穏やかな微笑を浮かべて食事の手を進めている。
じっとその上品な食事姿を見つめていると、大河内さんはやっぱり余裕ある表情で私へと顔を向けた。
「では、そういう楽しそうな話は場所を変えてしましょうか?」