外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「いただきます……美味しい。柑橘系で飲みやすい」
レストランでの食事からアルコールを飲み始めて、なんだかんだお酒の量はかなり進んでいる。
さっき食事のあとにレストルームに入って見た自分の顔が、ほんのり赤くなっていて結構飲んだことを自覚した。
普段はあまり顔に出ないほうだから、お酒が進んでいる証拠だ。
大河内さんに迷惑をかけない程度に自分で制御しなくてはならないから、このあたりでブレーキをかけていきたい。
「さて……さっきの、楽しい話ですが」
お互いにバーでの一杯目を味わったところで、大河内さんが話題を切り出す。
話してくれるんだ……?
上手いこと躱されたわけではなかったらしく、となりの大河内さんに目を向けた。
酔って顔に出ている私と違い、大河内さんは今日会ったときと全く変わらない。服装やセットされた髪が乱れることもなく、もちろん顔にも出ていない。
お酒には相当強いのかもしれないと思いながら、鼻筋の通った綺麗な横顔を見つめた。