外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「残念ながら、縁談を拒否する理由になるような相手はいませんね」

「え、そうなんですか? 意外……」

「意外って」

「え、だって、絶対そうだろうなって思ってたので」


 周囲の女性が放っておかないだろう容姿の持ち主だし、接してみて感じるこの穏やかで落ち着いた紳士具合。

 それに、外国語が堪能な外交官というハイスペックだ。

 綺麗で聡明な彼女がいるのだろうと勝手に想像していたのに。


「もしそうだとすれば、今この状況はまずいと思いませんか?」

「この状況……? あ、私とふたりということですか?」

「ええ。もしそういう相手がいるなら、こんな風に嘉門さんと食事になど来ていません」

「そっか、確かに」


 決まった相手がいるにも関わらず、私とこの状況は確かに浮気に認定される行為。発言に大河内さんの誠実さを垣間見る。

 でも大河内さんが認めていないだけで、彼に好意を持っている女性はきっとうじゃうじゃいるはずだ。

 だから、視点を変えて考えてみれば、大河内さんとお見合いをすることになる女性はかなりの大当たりということ。

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