外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「七央」
私の顔を見た七央は、こんなところでバッタリ会っても特ににこりとすることもなく、表情を変えずに近づいてくる。
すらりとしたその身には、今日もパイロットの制服がバッチリ決まっている。
さっき母が話題に出したこのお隣の幼なじみの七央は、航空会社『JSAL』で機長を務めている。
数カ月前に結婚をしたと突然聞かされ驚かされたけれど、相手の女性とはまさに運命のように出会い、結ばれるべくして結ばれたようだ。
大学病院の産婦人科で助産師をしている彼女とは、私もすでに何度も会っている間柄。私的にはもう友人になったつもりだ。
「良かった。声掛けといて人違いだったらまずいと思った」
「え? ああ、この髪?」
「ああ。佑華から話は聞いてたけど、確かに全然印象が違う」