外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「次に仕事で日本を出るときは、嘉門じゃなくなってるのかな……」
「嘉門さんの仕事に、理解のある方だといいですね」
何気なくそう言われて、もしかしたら結婚することが自分の今後の仕事に影響してくるかもしれないことに気がついた。
理解がない相手なら、私のカメラマンとしての仕事も続けられなくなってしまう。そんな相手だったら、余計に結婚なんて嫌だけど。
「なんか、考えれば考えるほど、気が重くなりますね……」
二杯目のカクテルを前に、項垂れる。
せっかくの楽しい時間につまらない話題を出してしまったことを反省していると、俯く頭にそっと手が載るような気配を感じた。
それは気のせいではなく、ぽんぽんと慰めるように髪を撫でて離れていく。
突然のことに鼓動が忙しなく動き出したけれど、気づかれないように二杯目のカクテルを口にした。