外交官と仮面夫婦を営みます～赤ちゃんを宿した熱情一夜～

「よし、今日は時間の許す限り飲みます！」

「え、大丈夫ですか？　すでに結構飲まれてますよ」

「大丈夫です。だって、独身最後になるかもしれないですし、少しくらい羽目外したっていいですよね？」


　明日飛行機に乗ってしまえば、嫌でも現実の世界に向き合わなければならない。

　だから、今日くらいは楽しく飲みすぎても罰は当たらないはずだ。


「羽目を外す、か……」


　呟くような小さな声に小首を傾げる。

　大河内さんは私を数秒じっと見つめ「いえ」と言った。


「確かに、そうですね」


　やけになったような私に、大河内さんは呆れて微笑を浮かべているのかもしれない。

　でも「とことん付き合いますよ」なんて言ってくれて、その気遣いに心から感謝した。