外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


 楽しい夜はあっという間に更けていく。

 美味しくお酒を飲み終えたのは、九時を少し回った頃。

 空港までの最終便に乗るために最後の一杯を飲み終えたときには、思っていた以上に酔いが回りいい気分になっていた。

 これ以上飲んでいたら具合が悪くなるやつで、一緒にいる大河内さんに迷惑をかけてしまう。それに、下手すれば乗船できなくなるところだ。


「大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」


 高いスツールから腰を上げ、足先をそっと床に下ろす。

 大丈夫だなんて返事をしておきながら、立ってみると足もとが頼りない。

 スツールの背もたれに掴まった私へ、大河内さんがすっと手を差し出した。


「あ、すみません」


 結局酔っ払いの世話をさせてしまって申し訳ないと思いながら、気遣いに感謝し手をのせる。

 私の手を取った大河内さんの手が大きくて、不覚にも自然と鼓動が高鳴った。

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