外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
囁くような言葉はどこか甘さを秘めていて、「えっ……」と肩が震える。
それはどう捉えたらいいのだろう。
アルコールのせいも手伝って、思考が上手く働いてくれない。
「あの、それは、どういう意味というか……」
質問の仕方に困っている私を、大河内さんはフッと吐息混じりに笑う。
これまで見たことのないどこか意地悪な雰囲気に鼓動がドクっと大きく音を立てた。
「こういう意味」
あっと驚く間もなく目前に綺麗な顔が迫って、唇に柔らかいものが押し当たるのを感じる。
もうかなりご無沙汰な感覚。
それはニ、三秒のうちに離れていき、目を見開いたまま大河内さんと再び視線が重なり合った。
口づけに驚きよろけた私は、いつの間にか彼の手にしっかり腰を抱かれている。高鳴り始めた鼓動は激しさを増し、全身を包み込んでいく。
「大河内さん……?」
動揺する私とは対照的に、大河内さんの表情に変化は窺えない。
ただ真っすぐ奥二重の切れ長の目に見つめられて、時が止まったようにその目を見つめ返した。