外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「やだ……酔っ払いをからかってますか? 私に合わせてそんな冗談言ってくれるなんて、大河内さん優しいです。真に受けちゃいますからやめたほうがいいですよ!」
この雰囲気はきっとお酒のせい。そう思うしかなくて、へらっと笑って言葉を並べる。
私みたいに顔には出ていないだけで、大河内さんも酔っ払っているのかもしれない。しかし……。
「冗談なんて言いませんよ。真に受けて構わないです」
「え? 何言ってるんですか」
腰を抱かれたまま、立ち止まっていたジェティの中腹から歩き出す。
島へ降り立ち大河内さんが私を連れていったのは、スピードボードの乗り場ではなかった。
オレンジ色のライトアップに浮かび上がる真っ白な建物。
大きく開けた入り口を入ると、その奥には洗練されたレセプションが見えた。
「ここで待っていてください」
大河内さんは入ってすぐのところに設置されている大きな白いソファに私を座らせ、ひとり向こうのカウンターへ向かっていく。
在中するスタッフと何かやり取りを交わし、数分すると私の掛けるソファへと戻ってきた。