外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「嫌だとか、そういうことじゃないんです。帰りたくないなんて思ったのは本当だし、それって、今日大河内さんと過ごせて、すごく楽しかったから……」
口に出して彼に今の思いを伝えることで、自分がどうしたいかという気持ちにも気がつく。
私の目をじっと見つめていた大河内さんの涼し気な目が、わずかに優しく笑みを滲ませる。
そっと背を押され中へ入ると、背後でドアが閉まると同時に抱きすくめられた。
背の高い大河内さんに抱きしめられると、すっぽりと包み込まれた自分がひどく小さく感じる。
下ろした髪の隙間から首筋に口づけられ、「あっ」と声が漏れていた。
帰らないという選択をしておいて、それでもまだ何かが私を引き留める。
「あのっ、でも、こんなこと……いいのかなって」
行き摺り、一夜の過ち、ワンナイトラブ──そんなフレーズが頭の中に浮かんでは消えていく。
最後の最後まで私を引き留めているのは、間違いなく理性。今までの人生で経験のない展開に戸惑わないわけがない。
「俺は今日あなたと過ごして、もっと一緒にいたいと思った」