外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
終始丁寧な話し方だった大河内さんの口調が急に変わり、その雰囲気の違いにドキッとしてしまう。
耳元で聞こえる悪魔の囁きのような妖しい誘いに、すでに乱れている鼓動がますます激しく音を立てていくのを感じた。
日本に戻れば、お見合いをさせられる。
もしかしたら、そのまま縁談が進み結婚するという展開になるかもしれない。
お互い大人で、独り身。誰に迷惑をかけることも、後ろめたいこともない。
だったら、今晩くらい……。
腕ごと抱きしめられている体を大河内さんへと向けようとよじると、黙って腕を緩めてくれる。
私のほうからも彼に両腕を回して抱きついた。
それが合図となったように顎をくいっと持ち上げられ、噛み付くような口付けで唇を塞がれる。
これまで穏やかで紳士的な姿しか見せていなかった大河内さんとは思えない、理性を飛ばしてしまったようなキス。
唇を割って口内に入ってきた舌に歯列をなぞられ、更に奥を許してしまう。
「っ、ぉ……こう、ち、さん」