過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
与えられる快感にたまらず膝をすり合わせれば、それに気付いた拓斗は自身が身にまとっていたものを取り払い、さらに下の方へと手を這わせてきた。

「いゃぁ……んん……」

触れられるほど、体はどんどん熱くなっていく。次第に思考は溶かされて、何も考えられなくなってしまう。

「美香は俺のものだ」

耳もとで囁く彼の声に、全身がゾクゾクしてくる。
額に甘い口づけを落とすと、拓斗はゆっくりと私の中へ入ってきた。

「あぁ……」

押し寄せる波に抗えるはずもなく、放り出されないように拓斗にしがみついた。私を諫めるように、拓斗はいたるところに口づけてくれる。

翻弄されるまま、どこまでも優しい夫に全てをゆだねれば、逞しい腕は力強く私を抱き込んでくれた。まるで、私を守ってくれるかのように。

「美香」

あの夜のように、拓斗は掠れた声で私の名前を呼ぶ。その声音に胸が震えて、無意識のうちに涙がこぼれてしまう。
この場でなら許されるだろうかと、思わず気持ちを口走ってしまいそうになる。

「美香、俺の名前を呼んで」

そんな願いなど、躊躇なく応えられる。

「拓斗……あぁ……たく、と……」

拓斗が嬉しそうに微笑むのが見えると、愛しさがあふれ出してくる。

いつか、この思いを伝えられるだろうか。
彼の役に立てて自分に自信が持てたとき、自分の気持ちを告げてもいいだろうか。

次第にスピードを増す抽送に、しがみつく手にさらに力を込めれば、再び深い口づけが与えられる。

「あぁ……」

真っ白な世界に放り出されても、この温もりがあれば怖くないと思えた。

「美香」

今の私が呼ばれたかったのは、たしかにこの掠れた声だ。

だから、心の奥深くに潜む黒い影には気づかないふりをする。
彼は私を本当に愛しているわけではないのだという事実から目を背け、今はこの腕のぬくもりを感じながらそっと目を閉じた。

< 102 / 187 >

この作品をシェア

pagetop