過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「やはりな。どう切り出したらいいか迷っていたけど……こうなった以上、美香にもきちんと話しておこうと思う。少し辛い話になるけど、大丈夫?」

一体彼は何を教えるつもりなのだろうか。苦い顔をした拓斗からは、どこか怒りすら伝わってくるようだ。

そんな前置きをされては、聞かないわけにもいかない。

「ええ」
「美香の携わった客は、美香の親切な対応に感謝している人が多い。デザインも、満足度がかなり高い」

私の評価だなんて、拓斗はなぜそれを知っているのだろうか?

「それが正確に伝わっていないのは、エテルナ側の……いや、桐嶋朔也による隠ぺいだ」
「え?」

不穏な響きに、思わず目を瞬かせた。

「俺の話を疑わずに聞いて欲しい」

真剣に見つめてくる拓斗に、ゆっくりと頷いた。

「美香の仕事は接客態度も仕上げたドレスも、顧客からかなり高評価を受けている。それはエテルナから得た……あー、入手方法は伏せるが、正確な情報だ」

あまり知られたくない伝手を使ったとかだろうか? そのあたりは拓斗が明かさないのなら聞かなくてもよいのだろう。

「しかし、桐嶋朔也はそれを意図的にフェリーチェ側に伝えて来なかった。自身の元で握りつぶして、伝える内容を改ざんしていたようだ」
「それは……一体なんのために?」

朔也には、私のドレスにかける気持ちを何度も話していた。だから、私がどんな思いでやってきたのか、彼ならわかってくれていたと思う。
そんな朔也が私の評価を隠ぺいするなんて、すぐには信じられない。

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