過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
信じさせて欲しい
「あのドレスを着用したポスター撮影、ですか」

呆然とする私に、米沢副社長が苦笑する。
拓斗と久々莉の電話を盗み聞いてしまった翌日、朝一のミーティングで米沢がポスター撮りについて告げた。

「そう。仕立ててもらったドレスの中だと、あの教会にはこのドレスしかないって思ってね。神山社長も同意見だ」

当の拓斗は、アローズの方へ行っており不在だ。

久しぶりに胸が躍った。
拓斗に頼まれたこのドレスは、言われた通り森の教会からイメージを膨らませて作った、私にとって至極の一点だ。
私が着たいと思うドレス。それが会社の顔ともなるポスターに使ってもらえるなんて、本当に嬉しい。

「撮影はできたら早めにしたくて、来月の頭を予定している」

もう8月も残すところ10日ほどだ。
最初に見せられた写真の影響もあって、イメージは緑の木々に囲まれてたたずむ白亜の教会だ。9月ならまだ、木々は生い茂っているだろう。きっと純白のあのドレスが映えるに違いない。
もちろんほかの季節でも、あの森の教会が素敵なことに間違いないだろうけど。

「その時は美香さんにも、いろいろと手伝ってもらうからね。あと、もし加えた方がよい小物なんかがあったら提案してね」

社長も私も同じ神山姓のため、ここでは〝美香さん〟と呼ばれている。 最初はそれがなんとなくくすぐったかったが、今はすっかり慣れてしまった。

「わかりました。楽しみにしてます。早速考えてみますね」
「お願いします」

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