過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
いろいろと想像すると落ち着かなくなりそうで、他ごとに没頭した。
とりあえず取り掛かったのが、ウエディングベールの用意だ。ドレスとのバランスを考えると、ショートベールがよいだろう。ビスチェとおそろいのレースを使ってもいい。

式を終えると、ウエディングベールをリメイクする人もいる。私が聞いたものだと、ベビードレスに使用したり写真たての飾りに使ったりと様々だ。ベールはどうしても買取になってしまうから、そういう提案もつけてあげれば親切だろう。
また新たな提案ができそうで、ワクワクしてくる。

以前は、デザインと向き合うだけが私の仕事だった。その後のドレスがどうなるのかと、深くは考えてこなかった。
私の仕事は、ご夫婦の門出を彩る一点でしかないと思っていたのかもしれない。
けれど、そのご夫婦には結婚につながるまでの過去が当然あって、式をひとつの通過点として未来へと続いていく。
私の作ったものがその後の人生にもいろいろな形で残してもらえるのなら、とても光栄だ。

「どうしたの、美香。やけに気合が入ってるじゃないの」

昨日とは打って変わって精力的に動く私の様子をみて、真由子がからかうように言う。彼女はミーティングの時間にはまだ出勤していなかったため、写真撮りの予定を口頭で伝達した。

「本当! あの教会って本当によい雰囲気よね。式は挙げないけど、写真だけは撮っておきたいっていうカップルにもよさそうだし」
「そっか。そういう提案もできるね」

見通しの明るい話をしていれば、幾分か不安もまぎれる。真由子と共に案を出し合うこの時間に没頭した。

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