過保護な御曹司の溺愛包囲網～かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです～
「話のできるところへ行くだけだ」

そう言いながら、朔也はどんどん人通りの少ない路地へ入っていく。

「は、離してよ」
「うるさいって」
「痛っ」

抵抗すれば、私の手首を掴む彼の手にぐっと力を込められて、痛みすら感じる。
私への気遣いや配慮などはいっさいない。以前では考えられなかったような乱暴な口調に、体が震えてしまう。

「ど、どこへ行くつもりなの」

答える気はないようだ。
無言のまま連れて来られていたのは、どこから少し行ったところにある喫茶店だった。外からは中の様子がよく見えない作りになっているが、店主をはじめ第三者の目がある場所だと安堵した。そんな場所で危害を加えられることはないだろう。

席に着くと、朔也はふたり分のアイスコーヒーをオーダーした。
ここへ連れて来られるまでは乱雑な様子に恐怖を感じたほどだったが、彼も落ち着きを取り戻したようで、歩いていたときの荒々しさは治まっている。

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