過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「美香、あの男と結婚したって本当か?」
「き、桐嶋さんも婚約したんでしょ? 三崎さんと」

問いかけに質問で返したのが気に食わなかったのか、朔也は眉間にしわを寄せた。

「こっちが先に聞いてるんだ。答えろよ」

乱暴な口調になる朔也にビクリと肩が揺れた。こんな彼は、これまでに見たこともなかった。
ここは正直に話しておくべきだろう。隠しても、どうせ知られるだろうし。

「……神山、拓斗さんと結婚したわ」

朔也はどう反応するのか。変に刺激してしまうのが怖くて、遠慮気味に告げた。

「へえ」

しばらくして返ってきた反応は、まるで嘲笑うかのようなものだった。

「そっちはそっちで、よろしくやってたのか」
「……どういうこと?」
「浮気、してたんだろ?」

自分がしてたから私もそうだろうと決めつけてくる朔也に、我慢できないほどの怒りがわいてくる。
でも、それと同時に彼との仲が拗れてしまった悲しみも感じた。

「してないわ。それは桐嶋さんの方でしょ?」

努めて平静に言うも、彼の方はそうではないようだ。

「はっ、どうだか」
「どういう意味?」
「おかしいだろ。俺と付き合ったままパリに渡って、帰ってきたと思ったらすぐにあの男と結婚するとか」

パリにいる間に、私が拓斗と浮気をしたと疑っているようだ。

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