過保護な御曹司の溺愛包囲網～かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです～

「なあ、美香。あいつと別れて、俺たちやり直さないか」
「な、何を言ってるのよ」

やり直すなんて、できるわけがない。あり得ない話だ。
私はそれを微塵も望んでいない。たとえ拓斗との関係に終わりを迎えたとしても、彼ともう一度付き合う可能性は皆無だ。

それに、朔也だって春乃さんとの結婚が決まっているというのに。

「俺には美香が必要なんだよ」

朔也に言われても、少しも嬉しくない。私が必要とされたいのは、もうこの人ではないのだから。

「何を言ってるの？　無理だから。だいたい、三崎さんがいるでしょ？　それに……仕事でも、私を陥れようとしたって知ってるから」
「仕事の方は悪かったって。これでも後悔してる」

少しも悪びれた様子のない朔也に、思わず顔をしかめた。

「悪かったって……そんな謝罪ひとつでは済まされないことをされたと思ってるから」

もし拓斗がいなかったら、私は不名誉な理由で退職させられていたはずだ。そうなったら、もう一度同じ仕事に就けていたかどうかも怪しい。裏のつながりは侮れない。悪い噂なんてあっという間に業界に広がってしまう恐れもあるのだから。それを『悪かった』のひと言で許すなんて、できるわけがない。