過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「かわいそうにな、美香。あいつらに騙されてるんだよ」
「どういう、こと?」
胸の奥がズキズキと痛くなってくる。
不誠実な人間の言葉に、耳を傾ける必要なんてない。そうわかっているのに、今の私は拓斗と久々莉を完全には信じられず、思わず聞き返してしまった。
私とは正反対に余裕たっぷりな朔也は、見せつけるようにゆっくりとグラスを持ち上げてコーヒーを口に含んだ。
「梶原さんさあ、フェリーチェを退職するってさ」
「うそ……」
「うそなんて言ってどうする。たしかな話だ」
ニヤリとしてみせる朔也に、頭が混乱した。
彼はフェリーチェとの窓口になっている。久々莉が退職するなんて一大事なら、ほかの社員から聞く機会もあるのだろう。知っていても不思議ではない。
それに対して私は、久々莉本人と連絡を取る機会が何度かあったのに、そんな話は一度だって聞いていない。その事実に、どこか裏切られたような気持ちになってしまう。
久々莉には引き抜きの話がいくつかあり、よく噂になっていた。本人は何も言わなかったけれど、フェリーチェよりも好条件のものが多かったと聞いている。
それでも彼女は、そのどれも首を縦に振らなかった。独立だって夢じゃないのになぜそうしないのかといつも疑問に感じていたが、気軽にできる話でもなく、結局本人に尋ねられないできた。
「どういう、こと?」
胸の奥がズキズキと痛くなってくる。
不誠実な人間の言葉に、耳を傾ける必要なんてない。そうわかっているのに、今の私は拓斗と久々莉を完全には信じられず、思わず聞き返してしまった。
私とは正反対に余裕たっぷりな朔也は、見せつけるようにゆっくりとグラスを持ち上げてコーヒーを口に含んだ。
「梶原さんさあ、フェリーチェを退職するってさ」
「うそ……」
「うそなんて言ってどうする。たしかな話だ」
ニヤリとしてみせる朔也に、頭が混乱した。
彼はフェリーチェとの窓口になっている。久々莉が退職するなんて一大事なら、ほかの社員から聞く機会もあるのだろう。知っていても不思議ではない。
それに対して私は、久々莉本人と連絡を取る機会が何度かあったのに、そんな話は一度だって聞いていない。その事実に、どこか裏切られたような気持ちになってしまう。
久々莉には引き抜きの話がいくつかあり、よく噂になっていた。本人は何も言わなかったけれど、フェリーチェよりも好条件のものが多かったと聞いている。
それでも彼女は、そのどれも首を縦に振らなかった。独立だって夢じゃないのになぜそうしないのかといつも疑問に感じていたが、気軽にできる話でもなく、結局本人に尋ねられないできた。