過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「あのふたり、昔付き合ってたんじゃないか。今の梶原さんにその気はないようだけど、神山の方は未練たらたらって感じに見えたし。あの男は以前から、梶原さんの元へしょっちゅう来てたらしいぞ」

拓斗たちが付き合っていた? 朔也はそう感じられるような場面を見たというのだろうか。

未練と言われれば、電話で話す拓斗はなんとか久々莉つなぎとめようとしているように聞こえたのはたしかだ。

拓斗は久々莉に頼まれるまま、私を守るために結婚までしたというのか。しかも、体の関係までもって。
私と出会ってからのすべての時間が、演技だったのだろうか。

違う。出会う前から巧妙に準備されていたのかもしれない。

弱っていた私を助けてくれた拓斗を信じたいと思うのに、朔也の言葉がそうさせてくれない。
この人はうそを吐き続けてきた。信じる価値もないのに、明かされる話に耳を傾けてしまうのは、心のどこかで拓斗を疑う自分がいるからだろうか。

「そんなの、信じられない」

なんとも弱々しい声になってしまう。

「信じられないじゃなくて、信じたくないの間違いだろ」

鼻で笑う朔也を苦々しく思うのに、ズバリ言い当てられて何も言えなくなってしまう。

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