過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「美香、近々あいつに捨てられるんじゃないか? 梶原さんがあの男のところに戻れば、美香は仕事でも私生活でも用済みだろ」
「用済み……」
朔也の放つ言葉が、頭の中をぐるぐると回る。
思い返してみれば、初めて出会った拓斗は紳士な人だと思えたのに、結局はその日のうちに体の関係を迫ってきた。自分も同意したとはいえ、つまり彼はそうして関係を持つことに抵抗のない人かもしれない。
これまで抱いていた拓斗という人間が、どんどん歪められていくようで苦しくなってくる。
「なあ、美香。俺のところに戻って来いよ」
足下から崩れ落ちてしまいそうでも、それだけはあり得ないと強く思う。拓斗との問題と朔也は別だ。
「そ、それはないから。婚約者を大事にしてよ」
朔也のこの軽さも、今まで気づいていなかった一面だ。
「婚約者ねぇ。あいつ、仕事中の俺を見かけて一目ぼれしたんだってさ。三崎グループのお嬢様と結婚なんて、そんなおいしい話を蹴るわけがないだろ?」
同意を求められても、そうだねと返せるものではない。
こんな嫌味な口調でしゃべるのがこの男の本性だと思うと、残念でならなかった。
「けど、退屈なんだよ。絵に描いたような箱入り娘なだけにワガママもひどいし、仕事だって言ってもほかの女とやりとりすればすぐ疑ってくる。美香と会ってた頃も、散々疑われたわ。そのくせ結婚するまではってヤラせてくれないし」
それほど前から私を裏切っていたのだと本人から語られる事実が、もはや他人事にしか思えない。もう自身の中で納得したことだ。それに今さら落ち込んだりはしない。
ただ、それでも確かにこの男は私の支えになってくれたときもあったと思うと、悔しくてならない。
不誠実な男の言い分に、これ以上過去を汚されたくない。
「用済み……」
朔也の放つ言葉が、頭の中をぐるぐると回る。
思い返してみれば、初めて出会った拓斗は紳士な人だと思えたのに、結局はその日のうちに体の関係を迫ってきた。自分も同意したとはいえ、つまり彼はそうして関係を持つことに抵抗のない人かもしれない。
これまで抱いていた拓斗という人間が、どんどん歪められていくようで苦しくなってくる。
「なあ、美香。俺のところに戻って来いよ」
足下から崩れ落ちてしまいそうでも、それだけはあり得ないと強く思う。拓斗との問題と朔也は別だ。
「そ、それはないから。婚約者を大事にしてよ」
朔也のこの軽さも、今まで気づいていなかった一面だ。
「婚約者ねぇ。あいつ、仕事中の俺を見かけて一目ぼれしたんだってさ。三崎グループのお嬢様と結婚なんて、そんなおいしい話を蹴るわけがないだろ?」
同意を求められても、そうだねと返せるものではない。
こんな嫌味な口調でしゃべるのがこの男の本性だと思うと、残念でならなかった。
「けど、退屈なんだよ。絵に描いたような箱入り娘なだけにワガママもひどいし、仕事だって言ってもほかの女とやりとりすればすぐ疑ってくる。美香と会ってた頃も、散々疑われたわ。そのくせ結婚するまではってヤラせてくれないし」
それほど前から私を裏切っていたのだと本人から語られる事実が、もはや他人事にしか思えない。もう自身の中で納得したことだ。それに今さら落ち込んだりはしない。
ただ、それでも確かにこの男は私の支えになってくれたときもあったと思うと、悔しくてならない。
不誠実な男の言い分に、これ以上過去を汚されたくない。