過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「誤解しないで欲しい。俺が久々莉さんとやりとりしていたのは、もっと実家を頼って欲しいという母の願いもあっての言動だ。おまけに、ここ数年のフェリーチェは正直よい印象がない。いくらお世話になったからと、もうそろそろ見限ってもいいんじゃないかと、彼女を説得するために接触してた。まあ、あとは仕事の相談とかも少しだけ」
拓斗は、以前からフェリーチェの経営方針に首を傾げていたらしい。経営陣からデザイン経験者を排除し、利益を追求する姿勢ばかりが見て取れ、それでも……と辞めるのを渋っていた久々莉を説得していたようだ。
「どうして久々莉さんは決断を渋ってたんですか?」
「それは、ひとつには美香の存在があったからだよ。あの会社で唯一目をかけてきた後輩が、久々莉さんにとっては可愛くて仕方がなかったらしい。心配で見てられないって。」
たしかに、彼女にはずいぶん目をかけてもらった自覚はある。
私の存在が彼女をあの会社に縛り付けていたなんて、申し訳ないどころではない。
「そんな……」
「美香が罪悪感を抱く必要はないよ。久々莉さんにはほかにも理由があったから。フェリーチェの前経営陣のひとりである高山専務だけど、数年前から久々莉さんと付き合ってるんだ」
「え?」
高山専務と言えば四十代半ばぐらいの方で、誰とでも気さくに話してくださる人だった。あの人が久々莉さんと付き合っているなんて、まったく気づいていなかった。
拓斗は、以前からフェリーチェの経営方針に首を傾げていたらしい。経営陣からデザイン経験者を排除し、利益を追求する姿勢ばかりが見て取れ、それでも……と辞めるのを渋っていた久々莉を説得していたようだ。
「どうして久々莉さんは決断を渋ってたんですか?」
「それは、ひとつには美香の存在があったからだよ。あの会社で唯一目をかけてきた後輩が、久々莉さんにとっては可愛くて仕方がなかったらしい。心配で見てられないって。」
たしかに、彼女にはずいぶん目をかけてもらった自覚はある。
私の存在が彼女をあの会社に縛り付けていたなんて、申し訳ないどころではない。
「そんな……」
「美香が罪悪感を抱く必要はないよ。久々莉さんにはほかにも理由があったから。フェリーチェの前経営陣のひとりである高山専務だけど、数年前から久々莉さんと付き合ってるんだ」
「え?」
高山専務と言えば四十代半ばぐらいの方で、誰とでも気さくに話してくださる人だった。あの人が久々莉さんと付き合っているなんて、まったく気づいていなかった。