過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「数年前、フェリーチェの創業者の孫娘である園田が、秘密裏に当時のフェリーチェの役員に接触した。金を握らせてその役員と結託したらしい。まあ、その人も家庭の事情だとかで、渋々だったけどな。その結果、園田は自身が相続していた株と合わせて、会社の株の過半数を手にすることになった。詳細まではわからないが、園田が求めたのは経営陣の退陣だ。自身を社長とした新体制の構築。もめにもめた結果、社員はそのまま雇用を継続し、詳しい事情は伏せて今まで通りの経営を続けるという条件で、高山さんらは身を引くことになったんだ」
そんな裏事情などつゆ知らず、驚きを隠せなかった。
「久々莉さんはこれまで通りでいられるのならと、そのまま在籍していた。でもやはりトップが専門外の人間ばかりでは不都合が生じる。高山さんはずっと身の振りを考えた方がいいと彼女に言い続けてきたんだ。ただ、思い入れのある会社だったから少しでも変われないかって、彼女は奮闘していた」
きっと久々莉にとってフェリーチェは、全てを捧げてきたような場所だったのかもしれない。
「その最中に、桐嶋朔也の美香に対する悪行を知った久々莉さんは、俺にどうにかしてくれないかと持ち掛けてきた」
「私を、拓斗に?だって、拓斗はデザインで私を知ったって……」
首を傾げた私に、拓斗は気まずそうな顔をした。
「あー。さすがに気づいたよな? そうだよ。俺はデザインよりも先に、美香本人の存在を知っていた」
どこか開き直った様子の拓斗は、仕方がないという雰囲気で話してくれた。
「身内だけでなく、他人とはどこか一線を引いて付き合う久々莉さんが、『野々原さんっていう後輩が……』っていつになく楽しそうに話してくるんだ。しかも、頻繁に。一体どんな女性なのかと気になって、久々莉さんに会いにフェリーチェに行ったときに何度か見かけた」
「私、全然覚えてないんですけど。拓斗のような人を一度でも見たら、忘れないと思うんですが」
こんな容姿の整った人だ。私以外の社員もきっと大騒ぎしただろう。
そんな裏事情などつゆ知らず、驚きを隠せなかった。
「久々莉さんはこれまで通りでいられるのならと、そのまま在籍していた。でもやはりトップが専門外の人間ばかりでは不都合が生じる。高山さんはずっと身の振りを考えた方がいいと彼女に言い続けてきたんだ。ただ、思い入れのある会社だったから少しでも変われないかって、彼女は奮闘していた」
きっと久々莉にとってフェリーチェは、全てを捧げてきたような場所だったのかもしれない。
「その最中に、桐嶋朔也の美香に対する悪行を知った久々莉さんは、俺にどうにかしてくれないかと持ち掛けてきた」
「私を、拓斗に?だって、拓斗はデザインで私を知ったって……」
首を傾げた私に、拓斗は気まずそうな顔をした。
「あー。さすがに気づいたよな? そうだよ。俺はデザインよりも先に、美香本人の存在を知っていた」
どこか開き直った様子の拓斗は、仕方がないという雰囲気で話してくれた。
「身内だけでなく、他人とはどこか一線を引いて付き合う久々莉さんが、『野々原さんっていう後輩が……』っていつになく楽しそうに話してくるんだ。しかも、頻繁に。一体どんな女性なのかと気になって、久々莉さんに会いにフェリーチェに行ったときに何度か見かけた」
「私、全然覚えてないんですけど。拓斗のような人を一度でも見たら、忘れないと思うんですが」
こんな容姿の整った人だ。私以外の社員もきっと大騒ぎしただろう。