過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
そのまましばらくして、目的地である教会の駐車場に到着した。
車を降り、少し歩いたところで足を止める。

「どう? 美香」

目の前には、写真でみた森の教会が建っている。
幼い頃の記憶と似通った、私の原点ともいえる光景にすぐには言葉が出てこない。

そんな私の顔を、隣に立つ拓斗が肩に手を添えて覗き込んでくる。
チラリと視線を合わせて、再び正面に戻した。

「憧れていた、場所です」

半ば呆然と呟いた私に、拓斗は満足そうに頷いた。

幼かったあの日、こんな教会の入り口に新郎と並んで立った従妹の姿が思い出される。木漏れ日に煌めくドレスが本当に素敵だった。あんな素敵なドレスを着たら、私もお姫様になれるんじゃないかって本気で思っていた。

そんな私のドレス作りの原点が、今目の前にある。こうして実際見たら思わず涙が出そうになるほど心が震えた。

潤む瞳にぐっと力を込めて耐えると、もう一度拓斗に視線を合わせた。

「ありがとうございます」

ここに連れて来て、原点を思い出させてくれたことに。
それから、この教会に合うドレスを、何の制限もなく作らせてくれたこと。何より彼の隣に立てる喜びに、お礼を言わずにはいられなかった。

「俺は、自分のやりたいようにしただけだから、礼なんていい。さあ、美香。準備をしておいで」

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