過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
私は何もしなくても、座っている間にみるみると〝新婦〟が作られていく。
さすがはプロの仕事だ。決して厚化粧ではないのに、私の欠点をカバーするだけでなくてよさも引き出してくれる。

髪はドレスを隠してしまわないように、アップシニヨンにするとあらかじめ決めている。これなら首回りもすっきりするし、メインとなるビスチェに使ったレースの邪魔にもならない。
ヘッドドレスには、薄いクリームや水色のドライフラワーを使用した。これはブーケともおそろいになっており、用意は真由子に任せていたものだ。

「それじゃあ、ネックレスをつけますね」

アクセサリーについては、お任せしてあった。さすがにそこは専門外だし、私の好みというよりはトータルのイメージが大事だから。
森の中を意識したのか、小花やリーフの連なるデザインのネックレスは、一目で気に入ってしまった。控えめなゴールドの色味も、落ち着いていて好みだ。それから、おそろいのピアスも可愛らしい。

鏡の前に立って、思わず呆けてしまう。自分じゃないと思ってしまうほど、素敵に仕上げてもらえた。

「美香、すごく綺麗よ」
「ありがとう」

真由子の心からの言葉に、素直にお礼を返す。

「素敵です!」
「こんな綺麗な姿を見たら、新郎様も驚かれるでしょうね」

新郎様? たしかに新郎役として拓斗が立つ予定だけど。
少々おかしな言い回しで褒められたのは、気のせいだろうか。私の気分を盛り上げるためとはいえ、なんだか彼女たちの声かけはかなり迫真に迫るものがある。

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