過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「た、拓斗、これは一体……」

「早く説明してあげなさいよ」と拓斗に言いながら、久々莉は元の場所へ戻っていった。

「理想の結婚式をプレゼントしたくて」
「プレゼント……さ、撮影は?」

呆けた表情で首を傾げる私に、拓斗は変わらず笑みを向けてくる。

「もちろん、撮影も予定通りするよ。でもそれはおまけだな。メインは美香と俺の結婚式だ。さあ、美香。みんなに幸せな姿を見せてあげよう」

私の隣に並んだ拓斗は、にこやかに見守る人たちの方に向いてぐいっと私の腰を抱き寄せてきた。

「まだ緊張してるかな?」

拓斗が小声で聞いてくる。
緊張、なのだろうか。どうやら拓斗によるサプライズの結婚式だというぐらいしか状況を把握できておらず、混乱し続けている。

「妻をリラックスさせるのは、夫である俺の役目だな」

なんとなく不穏な空気を感じた頃には遅かった。身をかがめた拓斗は、私の顎に手を当てて上を向かせると、目を閉じる余裕をも与えないままそっと口づけた。

瞬時に上がった冷やかしの声や拍手に、真っ赤な顔で俯くしかなかった。


まさか、その口づけられた場面もホームページに使われるとは思いもよらず、後々までその羞恥心を引きずる羽目になったのは、また別の話。


サプライズの結婚式は、全く型にはまらないものだった。
けれど、大切な人たちに囲まれた温かな時間は何物にも代えがたく、それを与えてくれた拓斗にますます愛おしさが増していく。

「拓斗、本当にありがとう」
「俺が美香にしてやりたかったんだ。けど、そんなに喜んでもらえたのなら……」

チラリと向けてきた視線は、それまで浮かべていた温和な笑みとは打って変わって、どこか危険な色を纏っていた。

「お礼の気持ちは、今夜ベッドで受け取ろうか」

不敵に微笑む拓斗を小突きつつ、思わず彼と過ごした夜を思い出して朱色に染まった頬を両手で覆い隠した。


END

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