過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
それから時間を空けずして、俺と美香は結婚した。
いくら思いを告げても信じようとしない美香に、それならと契約のようにして持ち掛けて囲った俺を、彼女はどう思っただろうか?
探るように、試すように彼女に近づけば、拒否はしなかった。それどころか、次第に受け入れられているのを感じて心が満たされていった。

ウエディングドレス作りに没頭する美香は、生き生きとしていた。その姿にすっかり安心していた頃、異変は起きた。

美香の様子がおかしい。本人の言う通り、ドレスを作り終えた一種の燃え尽き症候群かと思いきや、それだけとも思えない。
昨夜話を聞く中で、義姉である久々莉と俺の仲を勘違いさせていたとわかり、すぐさま否定した。

そもそも彼女とのつながりを話していなかったのは、あまりにも女々しい自身の姿が暴露されてしまうのを恐れたからであって、決してやましいからではない。義姉を通して美香の存在を知り、ただひたすら見守り続けていたとか、男としては隠しておきたかった。

桐嶋朔也が、その隙をつくようにして美香に近づいたと知ったときは、怒りでどうにかなってしまいそうだった。あいつだけは許しておけない。
ただ、どう制裁を加えようかと策を練るまでもなかった。

娘に甘いと有名な三崎専務も、さすがに結婚となると慎重になったようで、密かに桐嶋の周辺を調べさせていた。
手こずることもなく、美香の存在も浮気癖も掴んだのだろう。いくら桐嶋本人がごまかそうと画策しても、あれほど派手にやっていればすぐに明るみに出ていたはずだ。

そこに、職務上の不正もこっそり追加してやったのは、せめてもの意趣返し。あの男は美香の評価に手を加えただけでなく、横領にも手を染めていたと判明していたから、言い訳の余地はない。

数日のうちに、三崎春乃との婚約の話はなくなるだろう。思わぬところで三崎の人間と関係ができた中で明かされたのは、この後桐嶋は会社を解雇されて実家のある田舎へ戻されるというもの。
さらに、三崎側が何らかの制約を加える予定だという。詳細は不明だが、娘への逆恨みを防ぐ手を打つはず。桐嶋がこの辺りに戻ることはないだろう。美香に二度と近づかないのであれば、自分としてもこのあたりが落とし所だと思う。

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