過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
『プライベートに口を出すのは本意じゃないけど、どうしても黙っていられなくて』

彼女の言う通り、これは私と朔也の個人的な問題だ。他人に何かを言われるような話はないはず。
それなのに、わざわざ電話をしてきた久々莉の行動に首を傾げた。
違和感のある彼女の口ぶりを不思議に思いつつ、先を促す。

『桐嶋君、結婚するって聞いたわ』
「え?」

思わず驚きの声を上げてしまった。
どういうことなのか。たしかに別れは告げられたけど、結婚するなんて何も聞いてない。
思わず絶句すると、久々莉はいろいろと察したのだろう。『はあ』とため息を吐いて、若干低い声で話を続けた。

『その様子だと、何も知らないようね?』
「……はい。実は、二日前に急に別れを告げられたばかりなんです」

私と朔也の付き合いを知っている久々莉に白状していると、これが現実なんだとリアルに感じて、声が震えてしまう。

『二日前……それは本当? 私は今回の話を聞いて、もしかしたらパリに行く直前に別れてしまったのかと思っていたわ』
「いえ。朔也は笑顔で私を送り出してくれました。日本で待ってるからって」

その時の様子は今でも覚えている。朔也が笑顔だったから、何も心配ないと前向きに旅立てたのだ。

『そう』

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