過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
『お相手は、三崎春乃さん。三崎グループ専務の娘さんよ。ふたりの付き合いは一年ほど前からだと』
「三崎、グループ……」

三崎グループといえば、東京をはじめ国内の主要な地方都市を中心にホテルを展開している会社だ。観光だけでなく、ブライダル事業にも力を入れており、仕事柄私も多少関わったことがある。たしか、親族を中心とした経営体制だったはず。

春乃との結婚が本当だとしたら、朔也は私と付き合いながら同時にその女性とも付き合っていたということだろうか。
一気に頭が混乱してくる。

久々莉の方も、私の反応にいろいろと把握したのだろう。受話器の向こうでためらっている様子が伝わってくる。

『やっぱり』

彼女がそうつぶやく理由は、なんとなく身に覚えがある。
私たちの付き合いを知っていた彼女は、それについて何かを言うなどめったになかった。
ただ、過去に数回だけ『桐嶋君と付き合っているのよね?』と確認するように聞かれたことがあったのは明確に覚えている。
なぜそんなふうに聞くのかと問えば、『昨日、野々原さんではない女性と一緒にいるところを見かけて……』と言う。それを朔也に聞けば、仕事がらみで対応していたと返されて、そうなのかと疑いもなく思っていた。
でも、久々莉の反応からすると、それもどうやら違っていたのかもしれない。

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