過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
久々莉に返事をした夜に、私は朔也と会う約束を取り付けていた。
顔を合わせるのは二週間ぶりぐらいになるが、その間にメールや電話でのやりとりもあったため、それほど間隔が空いている気はしない。

桐嶋朔也との出会いは、私が働き出して二年目の頃になる。彼との付き合いはもう二年以上になり、私も二十五歳となった。

ブライダルプロデュース会社である『エテルナ』に勤務する朔也とは、仕事を通じて知り合った。
顧客の要望に合わせて、ホテルでのウエディングもレストランを貸し切ったようなプライベートな式にも柔軟に対応できるエテルナは、結婚を控えた女性からの人気が年々高まっている。

女性たちの中には、費用が予算内に抑えられるのならオーダーメイドのドレスを作りたいと希望する人たちも一定数いる。そこで提携しているのが、私の勤めているフェリーチェだ。
さすがに久々莉のような名の売れたデザイナーになると低予算では対応できないが、駆け出しのデザイナーならば、ある程度予算を抑えてオリジナルドレスを作ることができる。

エテルナとの窓口は私が務めていた。そこでの仕事のやりとりを通して朔也と親しくなり、彼からの告白で付き合うようになった。

三歳上の朔也は、話し上手で人懐っこい性格をしている。アウトドアが好きでいつも小麦色の肌をしており、スーツを着ていてもその逞しい体つきは隠せていない。
男性にしては大きな目はどこか憎めない愛嬌があり、厚めの唇には常に笑みが浮かんでいるような人だ。明るい性格も相まってなんだか愛想のよい大型犬のようだと、老若男女問わず人気があった。

朔也には、仕事がうまくいかずに落ち込んでいたときに何度も助けられてきた。
なかなか休みが合わなくて会える日もそれほど多くはないものの、確実に信頼関係は築けていると信じている。

< 6 / 187 >

この作品をシェア

pagetop