過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
やはり園田の話していた通り、結婚の話が進む過程で朔也は親しくしていた女性の存在を相手方に問われていたようだ。三崎グループのお嬢様となれば、結婚相手の身辺調査ぐらいはされるのだろう。
そこで指摘された中には、おそらく私以外の女性も含まれていたと思われる。

朔也はそのほとんどを顧客だと説明したもののどこか無理があり、私をスケープゴートにして、自分に付きまとっていた女に仕立て上げたのではないかと久々莉は推察していた。
彼は容姿が良かったし気さくな人柄もあって、人気が高かった。だから仕事上のつながりのある私が、ストーカー化するのもあり得ると思われていそうだ。


『本当に、信じられないわ』
「そうですね」
『いい、野々原さん。私は何があってもあなたの味方よ』

力強く言われた言葉に、思わず涙が溢れてきた。
この電話を受けるまで、自分はひとりぼっちになってしまったかのように感じていた。誰が敵なのかもわからず、心配してくれる人にまで疑いの目を向けてしまうほど、心が荒んだ。
自分はあまりにも無力で、このままやってもいない疑惑で会社に見限られ、夢をあきらめざるを得なくなるのではと絶望していた。

「ありがとう、ございます」
『あなたはいつだって、デザインと真摯に向き合ってきたって知っているわ。だから、絶対に折れてはだめよ』
「はい」

久々莉の励ましを受けて電話を切った後も、さらに涙が溢れてきた。
自分の味方をしてくれる声に少しだけほっとしたものの、現状があまりよくないことには変わりない。
それでも、久々莉のおかげでこのまま負けてはいけないと思えた。

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