過保護な御曹司の溺愛包囲網～かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです～

ふたりが暮らすのは、元から拓斗が住んでいたマンションだ。彼に言わせれば、夫婦になったのだから一緒に暮らすのは当然で、別居婚をするつもりはいっさいないらしい。
それに、私自身の住んでいたマンションはパリに渡る前に引き払ってしまっていたから、彼のマンションに住まわせてもらうのは必然でもあった。

ただ、とんでもないところに住んでいそうだと予想はしていたものの、帰国してそのまま連れていかれたマンションは想像を上回る豪華さで戸惑いしかない。

拓斗のマンションは、エントランスを入ったすぐには２４時間コンシェルジュが常駐しており、まるでホテルのようだった。

『何か必要なものがあったり、困ったことがあったりしたら、コンシェルジュに言えばいいから』

そう言われても、慣れない私にはどこまで頼ってよいのかよくわからない。
部屋は３２階で、居住空間としては最上階になる。このフロアには彼の部屋しかないというから驚いた。さらに上の階は、住人専用のジムや予約制のフリースペースもあり、ここではさまざまなカルチャースクールが開講されているという。

『一人暮らしには無駄に広くて。もっと狭くていいのに、立場上セキュリティーのしっかりしたところでないとだめだって言われてね』

苦笑する拓斗について室内に足を踏み入れると、リビングの窓の向こうには都心の夜景が広がっており、思わず感嘆の声をあげていた。
置かれている家具もセンス良く、高級なものであるとひと目でわかる。

留守にしていたせいもあって生活感はあまり感じない。けれど、リビングに敷かれたクリーム色のフカフカなラグが、この空間に優しい印象をもたらしており、なんだか拓斗らしいと思った。