過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
帰国して四日目の今日は、必要なものの買いに出かける約束をしている。今日まで休みを取っていた拓斗は、一日フリーだからと私を連れ出す気満々だ。
そこには、パリで過ごした最後の数日は、ホテルに閉じこもって過ごしていた私への配慮もあるのだろう。
考えてみれば、拓斗とこんなふうに出かけるのは初めてだ。

「必要なものは、全部俺がそろえるから」

車に乗り込んで早々に宣言した彼は、デパートへ向かった。
必用なものと言われても、生活用品は拓斗の部屋にあるもので十分だ。しいて言えば、調味料や食材を買うぐらい。とはいえ彼自身、頻繁ではないものの料理をしていたようで、ある程度のものはそろっていた。

てっきり日用品のフロアに向かうのかと思えば、エレベーターを降りたのは婦人服のエリアだった。手をひかれるまま迷いのない彼に着いていくと、カジュアルなものからフォーマルまで取り扱う高級店の前で足を止めた。

「知り合いのやっている店だ」

勤めているではなく〝やっている〟と言う彼の交友関係に驚愕してしまう。言葉通り、お知り合いが〝経営している〟お店なのだろう。
店員に声をかけた拓斗は、私に服を見繕うようにお願いした。

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