過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
これほど拓斗を不愉快にさせる話は、おそらく朔也絡みのものだろう。

「いろいろと聞き出したうえで俺の身分を明かして、先日俺たちが結婚したと話したら、途端に慌て出したな」

ある意味騙すような形になったとはいえ、向こうの本音を引き出すためには仕方がないだろう。もともと誠意を感じない相手なのだから、そこは私も否定はしない。
むしろ、よく確認もしないで対応した園田に問題があるのだ。

「桐嶋朔也との話は事実無根であり、俺の妻についてこれ以上あらぬ疑いをかけたり吹聴したりするならばこちらも黙ってはいないと言ったら、やっと謝罪してきたよ。本当なら謝る相手は美香だが……」

そう言いながら私を見つめる拓斗は、心配そうな顔をしている。
〝俺の妻〟という言葉に反応してしまいそうだったけど、彼の表情を見たらそれどころじゃないと思った。

「ごめんな。傷つけられるとわかっていたから、美香を連れていくわけにはいかなかった」

拓斗のその気遣いに、心が温かくなる。
フェリーチェに対して思うところはある。でも、謝って欲しいわけではない。冤罪とはいえ、自身の不名誉になる話は当事者である三崎グループとフェリーチェ止まりだ。
アローズの副社長の名前が出た以上、格下になる三崎グループもフェリーチェ側も下手なことはしないはず。もちろん朔也も。それならば、謝罪は不要だ。むしろ、長引かせてつながりを持ち続ける方が私としては嫌だ。

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