過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
自分は大丈夫だと言うように笑みを向けると、拓斗はやっと表情を緩めてくれた。
本来なら、拓斗としても自身の立場をこんなふうに使いたくはなかっただろう。それなのに、私を守るためにこうして動いてくれたのだ。彼には感謝こそすれど、謝られることなど何もない。

それよりも、彼はこれらのやりとりを、わざわざ人の目のある場でやってのけたことの方が衝撃的だ。おかげでフェリーチェの社員の間では、私たちは秘密裏にずっと付き合ってきたと認識されたようだ。

「大丈夫なんですか? そんな大胆な行動をして、拓斗が変に思われてしまいそう」
「問題ないよ。それに、美香をないがしろにされて許せなかったから」

拓斗が私の代わりに怒ってくれるのは嬉しい。私の味方は少なかったから。
ただ、彼はどうしてここまでしてくれるのだろか?

久々莉のように名が売れて、独り立ちをしてもおかしくないほどのデザイナーだったら、彼の仕事にも貢献できるだろうから手を尽くすのもわかる。
でも、私はそうじゃない。
こうして守ってくれる拓斗に、私は相応しい何かを返していけるだろうか。


拓斗がお風呂に入っている間に、久々莉からのメールが届いた。

【野々原さん、あなた愛されてるのね】

一瞬、何を言われているのかと首を捻ったが、このタイミングで送られてきたのだから、おそらく拓斗が今日フェリーチェを訪問した様子に対する感想なのだろう。
気恥ずかしさに、思わず頬が火照ってしまう。


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