滲み出る虹
断る理由もないので涼は遊んであげることにした。二人は普通に話をしたり、追いかけっこをしたり、アリの観察をしたりして過ごした。違和感を感じないわけはなかった。


涼は思い切って聞いてみることにした。
「君は奈々の弟か何かなのかな?」

無理もなかった。明らかに先日とは印象が違った。まるで別人のよう。でも、見た目はそっくり。いや、本人そのものだった。


その質問に対して、すごく考え込む仕草を見せたかと思えば、口を開いた。
「…よくわからないんだ。でもボクはボクだし、奈々のことは好き。お兄ちゃんのことも好き。でもね…ボクにはよくわからないの…」


とても辛そうな顔をしていた。算数の苦手な子供が必死に問題を解こうとしているような。それでも結局解けなかった時のような。


涼は何も言わずに頭を撫でてやった。この子にはこの子で色んな事情があるんだろうと思った。

「君、名前は?」
あくまでも優しい表情で涼は聞いてやる。


「ボクは和哉って言うの…」


自己紹介を終えると和哉は帰って行った。奈々とは会えなかったけど楽しい時間だった。
< 10 / 26 >

この作品をシェア

pagetop