滲み出る虹
とても時の流れを感じるのは遅かったが夕焼けは時間通りにきちんと訪れた。真っ赤な世界だった。赤と言えば止まれ。時も止まったかのようだった。


夕焼けに見とれている間に人の気配はすぐ側まで来ていた。それはまぎれもない、奈々だった。


「こんにちは」
涼はいつもの様に挨拶をした。

「こんにちは」
期待通りの返事が返ってきた。


「変なこと聞くかもしれないけど…奈々だよな?」
涼はさりげなく核心をついた。


「そうだよ、私は奈々だよ」
そう返す彼女の一言で涼はとても安堵感を覚えた。つい先日会ったところなのに随分久しぶりな気がした。
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